何一つかけてはいけない
おばあちゃんの裁ちバサミは
錆びているのによく切れる。
3年前に買った私のステーショナリー用のハサミは
すでに切れ味が鈍い。
「道具として評価されたい」
多鹿鋏製作所の若き四代目の強い想いが伝わる。
こんなに丁寧につくられたハサミが
ちょっとやそっとで切れ味が鈍るはずがない。
職人の後継者問題がよく取りざたされるが
それ以外にも材料を仕入れている先がなくなってしまっては
職人がいてもハサミを作り続けていく事は出来ないという。
当たり前の事だが見落としがちな事である。
「今、このハサミ用ネジをお願いしているところや
バネをお願いしているところが
頑張ってくれているから私たちも続けていける。
機械に使っている4mの革のベルトを作っている会社が
なくなってしまうときも買いだめをしておきました。
これで数十年持つと思います。
何一つかけてもダメなんですよ。」
1つの商品は多くの人によって支えられてできている。
食物連鎖のように繋がっているのだ。
この話を聞いて
「ネジ屋さん、どうかお願い」
と、心の中でつぶやく。
by askagoi
| 2011-06-21 00:29
| ものづくり
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